祭りの鳴り物:鉦、チャッパ、摺り鉦の種類と役割を知る
祭りの音色を彩る鳴り物とは
祭りの賑やかな音色といえば、力強い太鼓の響きや、高く澄んだ笛のメロディーがまず思い浮かぶかもしれません。しかし、祭りの音楽を構成する上で欠かせない、もう一つの重要な要素が「鳴り物」と呼ばれる楽器群です。
鳴り物とは、一般的に打楽器や体鳴楽器(楽器そのものを振動させて音を出すもの)のうち、太鼓や大型の金属打楽器(銅鑼など)以外の比較的小型のものや、特殊な音を出す楽器を指すことが多いです。祭りの演奏においては、リズムを刻んだり、合図を送ったり、音色に変化を加えたりと、多岐にわたる役割を担っています。
初心者の方が祭りの楽器に関心を持つ際、「あのシャラシャラした音は何だろう」「カンカンと鳴っている楽器は何だろう」と感じることがあるかもしれません。本記事では、祭りでよく耳にする代表的な鳴り物について、その種類や見た目、役割、基本的な音の出し方をご紹介します。
代表的な祭りの鳴り物の種類と特徴
祭りの演奏で使われる鳴り物にはいくつかの種類がありますが、ここでは代表的なものをいくつか取り上げます。
摺り鉦(すりがね) - 当たり鉦、チャンチキ
摺り鉦は、金属製の鉢状の楽器を、鹿の角などでできたバチで叩いたり擦ったりして音を出す鳴り物です。地域によっては「当たり鉦」や「チャンチキ」とも呼ばれます。
- 見た目と素材: 真鍮や銅などの金属製で、お椀を伏せたような形状をしています。直径は10cm〜20cm程度が一般的です。片方の手に紐で鉢を持ち、もう一方の手にバチを持って演奏します。
- 音色: 金属的な「チン」「チキ」といった、高く澄んだ、あるいは少し濁った響きが特徴です。バチで叩くだけでなく、鉢の縁を擦ることで「シャーン」という持続音を出すことも可能です。
- 祭りの役割: 祭りの演奏では、太鼓や笛のリズムに合わせて細かく拍子を刻んだり、特定のフレーズで合図を送ったりと、リズムの要として重要な役割を担います。その独特の音色は、祭りの活気や情緒を表現するのに効果的です。
- 基本的な演奏イメージ: リズムに合わせてバチで鉢を叩く(打ち鉦)か、鉢の縁をバチで擦る(摺り鉦)。基本的なリズムパターンを繰り返し演奏することが多いです。
チャッパ(ちゃっぱ) - 手拍子鉦
チャッパは、二枚の金属製の円盤を両手に持ち、打ち合わせて音を出す鳴り物です。「手拍子鉦」とも呼ばれます。
- 見た目と素材: 真鍮や銅などの金属製で、直径10cm〜20cm程度の、中央が少し盛り上がった円盤状です。多くの場合、中央の穴に紐や布を通して手に持ちます。
- 音色: 二枚の金属を打ち合わせることで、「チャッ」「シャーン」といった、シンバルに近い華やかで歯切れの良い金属音が特徴です。強く打ち合わせるか、軽く擦り合わせるか、角度を変えるかで様々な音を出すことができます。
- 祭りの役割: 祭りの演奏に華やかさを加えたり、太鼓や笛の演奏を盛り上げたりする役割を担います。また、リズムの一部を担当することもあります。
- 基本的な演奏イメージ: 両手に持ったチャッパをタイミング良く打ち合わせたり、擦り合わせたりして音を出します。太鼓のリズムに合わせてアクセントをつけたり、連続して打ち鳴らしたりします。
その他の鳴り物
地域や祭りの種類によっては、上記以外にも様々な鳴り物が使われます。
- 銅鑼(どら): 大きな金属製の円盤をバチで叩く楽器。重厚な「ゴーン」という音は、開始や終了、場面転換などの合図として使われることがあります。
- 拍子木(ひょうしぎ): 二本の木や竹の棒を打ち合わせる楽器。「カチカチ」という音は、注意喚起や合図、静寂を破るアクセントとして使われます。
鳴り物が祭りの演奏で果たす役割
鳴り物は、祭りの音楽において単独で演奏されることは少なく、多くの場合、太鼓や笛と組み合わせて演奏されます。
- リズムの構築: 摺り鉦などは、太鼓の基本的なリズムパターンを補完したり、さらに細かいリズムを刻んだりすることで、演奏全体のリズムをより複雑で豊かなものにします。
- 音色の変化と彩り: 鳴り物特有の金属的な音色や乾いた音は、太鼓の低音や笛の高音とは異なる響きを持ち、演奏全体の音色に深みや華やかさを加えます。特にチャッパの音は、祭りの賑やかさを象徴する音の一つと言えます。
- 合図と進行: 演奏の開始・終了の合図や、曲調の変更、隊列の動き出しなど、祭りの進行に関わる重要な合図を鳴り物で行うことがあります。
太鼓、笛、鳴り物がそれぞれの役割を果たし、互いに響き合うことで、祭りの活気あふれる、または厳かな雰囲気が作り出されるのです。
鳴り物の基本的な入手方法
祭りの鳴り物に興味を持ち、実際に手に取ってみたいと思った場合、いくつかの入手方法があります。
- 祭りの楽器専門店: 和楽器店の中でも、祭りで使用される楽器を専門に扱っている店舗があります。実際に楽器を見て、音色を確認しながら選ぶことができます。
- オンラインショップ: 和楽器や祭事用品を扱うオンラインショップでも、様々な種類の鳴り物が販売されています。手軽に多くの選択肢の中から選ぶことができますが、実際の音色を確認できない場合が多いです。
- 地域の祭事団体や保存会: 地域の祭りで演奏活動を行っている団体や保存会に相談してみるのも一つの方法です。楽器の貸し出しを行っていたり、古い楽器の譲渡先を探していたりする場合があります。また、地域の楽器店を紹介してもらえることもあります。
- 中古市場: フリマアプリやオークションサイトなどで中古の鳴り物が出品されていることがあります。価格を抑えられる可能性がありますが、楽器の状態を十分に確認することが重要です。
どの方法を選ぶにしても、ご自身の目的や予算に合わせて検討することが大切です。
まとめ
祭りの鳴り物は、太鼓や笛と同様に祭りの音楽を彩る重要な楽器です。摺り鉦やチャッパに代表されるこれらの楽器は、それぞれ異なる音色や役割を持ち、祭りのリズムを支え、演奏に変化と華やかさを加えています。
本記事でご紹介した鳴り物の種類や特徴について、祭りの音色を聴く際に少しでも思い浮かべていただければ幸いです。もし鳴り物の音に強く惹かれるものがあれば、楽器の種類をさらに詳しく調べたり、地域の祭事団体に問い合わせてみたりするなど、次のステップに進んでみてはいかがでしょうか。